恐怖の報酬

恐怖の報酬

恩田陸の「『恐怖の報酬』日記」(講談社)を読んだのである。

 

著者は、旅行が好きで海外にも憧れながら、「あんな重いモノが飛ぶわけがない」「足の下には何もなくて、ずっとずっと何もなくて、人間が生きていられるところよりずっと高いところにいる」というような理由で飛行機に乗れず、海外旅行に行ったことがなかったらしい。かつて国内で1回だけ乗り、それで恐怖がいや増したという人が、無謀にもいきなり英国に取材旅行に行ったらしいのである。それもツアーではなく、編集と二人の個人旅行で。

 

これは一応、その旅行記だが、最初から3分の1くらいは「飛行機に乗りたくない」「乗ってしまった」「恐い」「眠れない」「飲んでも酔えない」という愚痴で埋まっている。英国に着いて、やっとホテルに入った時点でもう半分過ぎているのである。これでは「飛行機搭乗恐怖体験記」だ。

 

私も、エコノミークラスのあの家畜運搬ルームの描写については賛成するにやぶさかではないが、それにしても度を越している。とにかくあらゆることに文句をつけて、しかもしょっちゅう横道に逸れる。時々自分が書いた本や、これから書く予定の本についての説明があったり、列車は好きだ、英国まで列車で行くなら1週間かかってもいい、という話とか、唯一席の照明がピンポイントで手元を照らすのは良いとか、ページの穴埋めとしか思えないような記述ばっかりで、ああ恩田陸くらい名が売れるとこういうゴマカシも使えるのだなあと思ってしまう。

 

英国に着いた後は、ストーンサークルとか美術館とかアイルランドとかに一応行くのだが、やはり記述の主体はビールだったりする。そもそも題名が酒なのだから仕方がないのかもしれない。
ただし、ところどころで何もない平原と空と雲を見ながらそこに色々なシーンを観て、ああこれは私がいつか書く話だ、と決めつけているところなんか、さすがにホラー作家(だよな)だと思わせられる。「イヤハート嬢の到着」という絵を元に、そのシーンを入れた本を書いた(書く)話とか、随所に「仕事」のことがまざっているのは凄いと思う。作家はいいなあ。

 

実は私は英国には行ったことがない。一度ツアーに申込みかけたが、内容がピーターラビットだったのと、代理店の人が「他の申込者は女性ばっかですよ」と言ったのでやめてしまった。それに英国に行くならツアーじゃなくて個人旅行で行きたい。英語が通じる珍しいヨーロッパの国だから。他国は恐くて一人では行けないんだけど、英国なら何とかなりそうな気がするのである。

 

ブリティッシュ・エアラインはこの本で恩田陸が酷評しているので、できればヴァージンアトランティックに乗りたい、と思っているのだが、やはりエコノミーはイマイチなんだろうなあ。

 

そう、実は私もヨーロッパに行くときには向こうのことより飛行機が気になるタイプである。あの家畜運搬仕様の椅子はきつい。ビジネスクラスに乗りたいなあ。5倍かかるけど。


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